株式会社建設コンサルタント

室内土質試験

採取した土の試料を用いて行う室内土質試験は、物理試験、力学試験、化学試験に分類されています。

砂と粘土では土の性質が異なり、一般に、砂質地盤では「 液状化 」が、粘土質地盤では「 圧密沈下 」が問題になりやすいため、室内土質試験を行うことで、土の状態や分類を調べたり、土のせん断抵抗 ( 面の平行方向に作用する抵抗力 ) や、土の透水性などを確認したりすることができます。

【 液状化 】
地下水などで飽和した砂質地盤が、地震動などの衝撃により水と土粒子が分離し、粒子間 ( 間隙 ) の水が上昇し、土粒子が沈んで、液体のような状態になることを言います。
一般に液状化の判定が必要とされるのは、地表面から 20 m 以内の深さの細粒分含有率が 35% 以下の土層で、細粒分 ( 粒径 0.075 mm 未満の土粒子、粘土、シルトが該当 ) の含有率が低く、N値が小さい ( 打撃回数が少ない ) ほど、液状化が起こりやすい要因のひとつとなります。
【 圧密沈下 】
地下水などで飽和した透水性の小さい粘土質地盤 ( シルト ⋅ 粘土など ) へ、長時間にわたり、荷重などの圧がかかることによって、粒子間 ( 間隙 ) の水が徐々に絞りだされて、沈下する現象のことを圧密沈下と言い、地盤のせん断抵抗が失なわれるために、斜めに傾く ( 不同沈下 ) 原因にもなります。
ただし、比較的N値の低い土層の場合でも、過去に受けた最大の先行圧密応力 ( 抵抗力 ⋅ 荷重 ) 以下の場合、沈下量を検討する必要はほぼありません。
なお、砂質地盤では、透水性が大きいため、荷重が加わると同時に沈下 ( 即時沈下 ) することが多く、粘性土の圧密沈下のような時間との関係性はほとんどありません。

なお、実施する室内土質試験の種類によって、土の試料の採取方法が異なるため、試験の目的に適した試験器 ( サンプラー ) を選定し、ボーリング孔から土の試料を採取します。

物理試験

物理試験では、主に砂質土や粘性土など、土質の判別を行います。

  1. 土の状態を調べる試験 ⇨ 「 乱れた試料 」
    • 土粒子の密度試験
      • この試験では、土の基本的な性質を確認することを目的に、土の質量と体積を測定します。密な鉄鉱石 ( 硬い石 ) を多く含むと数値は高くなり、有機物 ( 腐植物 ) を多く含むと数値は低くなります。
    • 土の含水比試験
      • この試験では、土の塊を構成する土粒子 ⋅ 水 ⋅ 空気の3つの要素のうち、水と土粒子の質量比を百分率で表します。含水比は一般に細粒分が多くなるほど大きくなり、砂、れきが多くなると小さくなります。また、「 自然状態の土 」と「 再調整した土 」では、数値が表す意味は異なり、自然状態の場合は、圧縮性 ( 軟らかさ ) や強度特性 ( 硬さ ) と関係し、再調整した土では、液性限界や塑性限界の値として利用します。
    • 土の湿潤密度試験
      • この試験結果の数値は、地盤の支持力や沈下計算の算定をするひとつになります。一般に土粒子の密度が高いと硬く締まっている土、密度が低いと軟弱で緩い土と判断できます。
  2. 土を分類する試験 ⇨ 「 乱れた試料 」
    • 土の粒度試験
      • 土の工学的性質は、粒度によって決まるため、この試験により、砂質土と粘性土の分類ができるようになります。土の粒度は、粒径0.075㎜ ( 75μm ) 以上はふるいを行い、これ以下は沈降分析を行って求めます。一般に、粒径0.075㎜以上 ( 石 ⋅ 礫 ⋅ 砂 ) は、「 砂質土 」、0.075㎜以下は ( シルト ⋅ 粘土 ) は、「 粘性土 」と呼ばれます。この試験は、液状化に対する安全率の検討に使用するほか、透水性の判断にも使います。
    • 土の細粒分含有率試験
      • この試験は、特に液状化に対する安全率を検討するために行うものですが、土の粒度試験ほどの細かい分類の必要がなく、細粒度 ( 0.075㎜以下 ) と粗粒度 ( 0.075㎜以上 ) の分類を目的としているため、試験の作業が少なく簡易粒度試験とも呼ばれています。そのため、土の粒度試験と比べると費用は安価になります。
    • 土の液性限界試験 ⋅ 土の塑性限界試験
      • この試験は、土の性質判断や分類をするために行います。シルトや粘土を多く含む細粒土は、含水量によって「 軟らかい 」「 中くらい 」「 硬い 」「 もろい 」など、液体から固体までの状態になります。この結果により盛土材料などの適否を判断します。

力学試験

力学試験では、様々な試験機で土の強さなどを求めます。土のせん断抵抗は、砂質土の場合は内部摩擦角、粘性土の場合は粘着力によって決まります。

  1. 土の強さ、土圧、支持力などを調べる試験 ⇨ 乱れの少ない試料
    • 土の一軸圧縮試験
      • この試験は主に粘性土を対象としたもので、側圧 ( 横方向 ) を受けずに自立する土の試料に鉛直方向から圧力を加えて試験を行います。一般にシルトや粘土などの圧縮強さなど、土の強度を測定することを目的とし、粘性土の摩擦力 ⋅ せん断強さ ⋅ 形係数などを推定するほか、粘性土の粘着力も求めることができます。
    • 土の三軸圧縮試験
      • 一軸圧縮試験と三軸圧縮試験の違いは、土がより自然状態に近い状況を設定して作り出し、鉛直方向だけでなく側圧も加えて行うところで、この試験では側圧を変化させて土の破壊強さを測定します。この側圧と破壊強さから土の粘着力や内部摩擦角などを知ることができます。試験は、圧縮時とせん断時の排水条件と間隙水圧の測定を組み合わせて行います。
  2. 圧縮性を調べる ⇨ 乱れの少ない試料
    • 土の圧密試験
      • この試験は、機械を用いて土に鉛直方向から段階的に圧力を加え、圧縮指数 ⋅ 圧縮係数 ⋅ 圧密係数 ⋅ 透水係数など、土の圧縮性と圧密速度に関する定数を求めるために行います。土は一般的に圧力を加えると体積が減少し、密度が増します。粘性土地盤の土粒子自体は非圧縮性のため、粘性土による沈下は間隙の減少が原因で起こります。求めた定数から、建築物や路盤 ( 道路や駐車場など ) の荷重による沈下量や、自然地盤の沈下要因の経過推定するなど、圧密沈下の予測に使用します。
  3. CBR試験 ⇨ 乱れた試料 ⋅ 乱れの少ない試料
    • この試験は、道路や駐車場の舗装路の強度を設計するために行われるもので、採取した土を締固めて行う方法と自然状態の土を浅層の容器を使い乱さない状態で採取して行う方法があります。
【 乱れた試料 】
ボーリングによる試掘で採取した土や、標準貫入試験用の試験器 ( サンプラー ) から採取した土のことを「 乱れた試料 」といいます。
【 乱れの少ない試料 】
ボーリング試験で堆積深度を確認し、対象となる土をシンウォールサンプラーなどを使って、原位置で採取した試料のことを「 乱れの少ない試料 」といいます。「 乱れの少ない試料 」は、主に土の自然状態を確認するために採取します。

化学試験

  1. 土のPH試験
    • 土の中に含まれている水が酸性かアルカリ性か判定する試験で、地中にあるコンクリートの劣化や鋼材の腐食を検討するために行います。
【 日本産業規格 ( JIS ) と地盤工学会の基準 】
日本産業規格 ( JIS ) は、業務を円滑に遂行するために定められている日本の国家規格のことですが、その性格と役割、制定や見直しについての原案は地盤工学会が作成しています。
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2022年10月 (令和4年)