株式会社建設コンサルタント

情報通信設備を見直そう

長きにわたりこれまでの経済発展に欠かすことのできない社会基盤 ( インフラ ) といえば、道路や鉄道、港湾やダムなどの「 産業基盤 」、学校や病院、公園などの社会福祉や環境における「 生活基盤 」のことを指していましたが、今では高速で大容量の通信が可能な回線や電波、パソコン、スマートフォンなどの情報通信設備が「 通信基盤 」となり、社会基盤のひとつとして、人間の生活や経済活動になくてはならないものになりました。

国の政策によって、通信の自由化が始まった 1985年 ( 昭和60年 ) から現在までの間に、新しい情報技術 (nformation echnology ) や、情報通信技術 (nformation and ommunication echnology ) が次々に登場し、世界中でさまざまなサービスが生まれてきましたが、これらの新しい技術やサービスを使うために、従来からある固定電話の通信設備が利用されてきました。

総務省のWebサイトでは、2025年頃までに電話交換機などの設備維持が限界を迎える、とあり、この2025年が経済産業省のDXレポートの「 2025年の崖 」と合致するため、レガシーシステムと呼ばれるものの中にこの固定電話の通信設備が含まれていると考えられます。

この固定電話の通信設備は、建築の分野では電気設備の中の情報通信設備に分類されていますが、情報技術 (IT) と情報通信技術 (IⅭT) の進歩が早く、この固定電話の通信設備に関連する新しい体系の見極めが重要になっています。

情報通信設備は、普段、目にする機会がないものもありますが物理的に必ず存在するため、今ある情報通信設備を見直すことで、現時点でどのような使い方をしているかを知り、情報通信の体系を整えるために、どんな設備を選定することが望ましいか検討することができるようになります。

情報通信設備にはさまざまな種類があり、いろいろな組み合わせがあります。まずは情報通信設備について、どんな種類があるか確認していきましょう。

情報通信設備 Information and Communication equipment

建物内で情報伝達を行うための設備のことを情報通信設備といい、固定電話や構内情報通信網 ( LAN ) 設備の他、放送設備やインターホンなども情報通信設備に含まれています。

また、情報を伝達する伝送路としてアナログ回線 ( メタル線 ) が長らく用いられてきましたが、拡張性が高い光ファイバーへ移行が進んでいます。これまでの通信技術の移り変わりを振り返るとともに、現在、建物のどこまで光ファイバーが届いているか、確認してみましょう。

固定電話設備

1. 構内電話交換機 ( Private Branch eXchange 以下 PBX )

建物や敷地の中を構内といい、PBXとは電話局の局線 ( 外線 ) を電話機に接続したり、事業所内にある電話機を相互に接続 ( 内線 ) したりする装置のことで、回線数や内線の多いところで普及している。

従来、この交換作業を事務所ビルなどでは、電話交換手が行っていたため、PBXを置くことで効率的、経済的に処理できるようになった。

2. ビジネスホン ( ボタン方式 )

ビジネスホンの電話主装置が、外線と内線の交換を行う固定電話。小規模向けに多機能化され、PBXと同様の使い方ができるものもある。固定電話機の相互接続はメタル線を使用する。

3. IP電話 ( インターネットプロトコル Internet Protocol  以下 IP )

IP技術により電話機を1端末としてネットワーク上で使用するもの。

4. ファクシミリ ( FAX )

紙媒体の文書や画像を別の場所に電話回線を使って転送する装置。デジタル通信が発達する前に電話以外の通信手段として普及した。

電話の種類 電話の種類
information
インターネットプロトコル ( Internet Protocol )
世界的に統一されたインターネット用の通信規約 ( プロトコル ) のひとつ。
さまざまな種類の情報機器同士を相互に接続するため、情報機器に通信用のIPアドレス ( 番号 ) を付与して通信先を指定、呼び出しを行う。

盤 ( 配線 ⋅ 配電 ⋅ 分電 )

1. 主配線盤 ( MDF Main Distributing Frame )

電話局の局線(外線)を全て引き込み、構内交換機と建物内のケーブルを接続する最初の配線 ⋅ 配電盤。MDFは、共用スペースを利用して設置したり、MDF用に1室設けたりすることがある。

2. 中間配線盤 ( IDF Intermediate Distribution Frame )

MDFで分配した電話局の局線 ( 外線 ) を建物の中間階などでさらに分配するための配線盤。

3. 情報分電盤

集合住宅などの各住戸に電話、テレビ、インターネットなど情報系ケーブルを引き込む位置近辺に設置する分電盤。

電気を分配する端子台やテレビ分配器のほか、通信に必要となる集線装置、回線の終端装置、電源コンセントなど、必要に応じて収集するもの。

盤 電話の種類

通信回線と通信技術の種類

1. メタル線の使用

芯線に銅などの金属が使われている線で、古くから通信に使用されている。

• アナログ方式

1契約につき1回線、1つの電話番号が付与されるため、基本的に他の電話がかかってきても、同時通話ができない。

アナログ回線は別口の電気が不要なため、災害対策として公衆電話などに使用されている。

メタル線
• ISDN方式 ( Integrated Services Digital Network ) 1990年後半~

アナログ回線に終端装置 ( DSU Digital Service Unit ) を設置して、デジタル通信を可能にしたもの。

1契約 ( 1回線 ) で、通話とインターネット通信を同時に利用できるほか、1契約で通話とFAXの同時通信も可能。

( 2018年11月末で新規受付終了 )

パソコン、電話
• ADSL方式 ( Asymmetric Digital Subscriber Line ) 2000年前半~

アナログ回線の終端にADSLモデムを設置してデジタル信号とアナログ信号を高速で相互交換する。

ADSLモデムを構内情報通信網 ( LAN ) の構成機器であるルーターと接続することで、1契約 ( 1回線 )  を複数のパソコンなどの端末で共有して利用できるようになるが、通話とFAXの同時利用はできない。上りと下りの速度が大きく違うため、ISDNより速度は早いが、安定性は劣る時がある。

( 2023年1月末にサービス終了予定 )

information
☏ アナログ以外は電気が必要なため、停電時は使用できない。
☏ 警備の機械、エレベーター通信にアナログやISDNを使用している場合がある。
☏ 銀行専用の端末 ( FBなど ) で、アナログやISDNを使用している場合がある。

2. メタル線と光ファイバーを併用 〖 FTTC Fiber To The curb 〗〖 FTTB Fiber To The Building 〗

• VDSL方式 ( Very high bit rate Digital Subscriber Line )

建物までは光ファイバーで、建物内部はメタル線を用いて通信するもの。

主に集合住宅や事務所ビルなどが対象で、共用スペースにVDSL集合型の回線終端装置を設置して、各室はVDSLモデムを設置する。通信速度はADSLより高速。

3. LANケーブルと光ファイバーの併用 〖 FTTB Fiber To The Building 〗

建物までが光ファイバーで、建物内部はLANケーブルを用いて通信するもので、集合住宅や宿泊施設なども対象となる。

4. 同軸ケーブルと光ファイバーの併用 〖 FTTN Fiber To The Node 〗

建物までが光ファイバーで、建物内部はケーブルテレビ ( CATV ) の同軸ケーブルを用いて通信するもの。

5. 光ファイバーを使用 〖 FTTH Fiber To The Home 〗

建物まで光ファイバーで、その建物内部も光ファイバーを用いて通信するもの。

光回線の終端に装置 ( ONU Optical Network Unit ) を設置して光信号をデジタル信号に相互変換する。

建物内部にメタル線が配線されている既存の建築物 ( 集合住宅や事務所ビルなど ) では、既存配管に光ファイバーを通すことができると建物内部で使用可能となるが、配線用スペースを既存配管で確保できるかという物理的な事情のほか、光ファイバーに直径0.1㎜程度の極めて細いガラス繊維が使われているため、光ファイバーは曲げに弱く固くて折れやすいという特徴があるが、近年は折れにくように加工されたものが使われている。

放送設備

放送設備 ( 拡声 ) は連絡やBGM放送のほか非常放送を兼ねる場合が多い。

放送設備には劇場などの音響設備も含まれ、この場合、音量だけでなく音の質や効果も重要となる。

放送設備
2021年8月 ( 令和3年 )