検索エンジンを知る
私たちが知らない「こと」や「ことば」に出会った時、その「こと」や「ことば」をキーワードとしてパソコンやスマートフォンなどの機器に入力して、辞書を引くように Web上にある情報の中からその意味や内容を検索して調べることが多くなりました。
この時に使うソフトウェアを検索エンジンといい、日本で現在、最も使われているのは Google の検索エンジンであることはよく知られています。
Web の普及初期には、手作業で Webサイト ( 以下サイト ) を登録し、情報を集めて提供するディレクトリ型 ( 分類型 ) の検索エンジンが一般的で、かつて YAHOO! がそのディレクトリ型の代表でした。
その後、急速に増加するデジタル情報に対応するため、プログラムによって情報を自動で集めるロボット型の検索エンジンが登場します。
このロボット型の検索エンジンを最初に作ったのがアメリカの Google です。自動的に多くのサイトを高速で分析、保存して情報を集め、情報提供をするのがロボット型の特徴です。
これらの検索エンジン誕生の背景について、もう少しまとめることにします。
YAHOO! と Google のはじまり
1. YAHOO!
YAHOO! は、1994年 ( 平成6年 ) アメリカ カリフォルニア州のスタンフォード大学 David Filo ( デビット⋅ファイロ) が集めていた気に入ったサイトをリストにして効率よく探して整理できる仕組みを jerry Yang ( ジェリー⋅ヤン ) と一緒に共同で開発します。その後、それを使ってサイトの分類サービスの提供を始めたことが YAHOO! 検索エンジンのはじまりでした。
ディレクトリ型の検索エンジンの特徴は、「 Webサイトの目次 」「 リンク 」「 索引 」などの ( ディレクトリ ) を作り、その中へ登録するサイトを人の目で選び、情報を提供するサービスであったことから、サイトの運営者は、そこに登録してもらえるような良質なサイトを作る努力がもとめられました。
その反面、登録するサイトの選定は人の主観に委ねられ、難しい話題になるほど人の手でそれらを補うことは容易ではなく、また、その仕組みを維持するために費用がかかるということも指摘されていました。
そこに登場したのが Google です。
2. Google
Google は、1996年 ( 平成8年 ) スタンフォード大学の Sergey Brin ( セルゲイ⋅ブリン ) と Larry Page ( ラリー⋅ペイジ ) が大学の図書館システム開発の一環として、膨大なデータの中から関連する情報を検索する仕組みを作り始めたことが Google 検索エンジンのはじまりです。
その仕組みは、被引用回数、引用メディアの重要性、引用者の重要性など、学術文献評価システムの考え方をそのまま踏襲してプログラムされたもので、良質なものから順番に検索結果を表示するという形をとっていたため、その仕組みは検索している人にとって必要な情報が提供されるという多くの評価を得て、1998年 ( 平成10年 ) に Google は法人化、市場を拡大していきました。
Google の検索エンジンは、Webページの中で示されるハイパーリンクを手がかりに、Web上にある情報の中から必要とする情報の検索を可能にするというものでした。
検索エンジンを使うということ
Web と Google の組み合わせが誕生したことより、人間にとってWeb の重要性は年を追うごとに増しています。
情報を伝える手段が、紙や写真フィルムなどの媒体から、Web に拡がったことによって、デジタルへの移行が顕著に進み、さまざまな情報に接しやすくなりました。
YAHOO! は「 気に入ったサイトを整理して効率よく探せるように 」、Google は「 膨大なデータの中から必要とする情報を素早く検索する 」という目的から、検索エンジンを生み出しましたが、現在 Web上にある情報は1990年代頃からデジタル化されたものだけで、過去の情報全てが Web上で閲覧できるように変化したわけではなく、また、情報が整理されているとも限りません。
また、サイトの運営者が自らのサイトを上位に表示させるよう、検索結果を間接的にコントロールする、検索エンジン最適化 ( SEO ) という方法が普及し、検索結果を意図的に操作する状況が発生しているほか、Google がどのようにサイトを評価し検索順位を決めているのか、その基準を公開していないため、検索結果の透明性が確保されていないことが指摘されています。
日本では、ヤフー株式会社が運営する Webサイト YAHOO! JAPAN が、Web を利用する時に最初に見るサイト ( ポータルサイト ) としてよく利用されていますが、YAHOO! JAPAN のサイト内にある検索サービスは、2010年 ( 平成22年 ) から Google の検索エンジンを採用しています。
YAHOO! JAPAN は Web の普及当初、アメリカの YAHOO! と同じディレクトリ型を主として、ロボット型エンジンを付随させた独自の検索エンジンをサイト内で提供していましたが、Google の検索エンジンを採用したことで、YAHOO! JAPAN の利用者は Google の検索エンジンを使うことになり、同時にその検索履歴を Google へ提供することになります。
そのため、日本国内でWebから情報を得る基盤 ( インフラ ) が海外の少数企業に管理されることで、検索結果に偏りが生じるのでは、とも言われ、国によって事情は異なりますが、欧州連合 ( EU ) の欧州委員会は、Google が 2006年 ( 平成18年 ) から独占禁止法に違反していると判断し、2017年 ( 平成29年 ) より制裁金の支払いを命じています。
欧州委員会が独占禁止法違反としたのは、買い物検索でGoogle のサービスを優遇すること、スマートフォン向のシステムソフトウェア Google の Android ( OS ) とアプリケーションソフトウェアを抱き合わせることでソフトウェア開発者から手数料を徴収すること、インターネット広告で競争を疎外する契約を要求することで、これらについての制裁金を科しました。
なお、アメリカの YAHOO! サイト内で提供している検索サービスは、2010年 ( 平成20年 ) からMicrosoft が 2009年 ( 平成21年 ) に新たに発表した検索エンジン「 Bing 」に移行しています。
日本でも Microsoft の Webブラウザ Edge から「 Bing 」を使えますが、スマートフォンの普及とともに Google の Webブラウザ Chrome が広く普及し、この Chrome に合わせて作られる Webサイトも多いからか、現時点では「 Bing 」を使用している割合は多くないようです。
なお、検索エンジンは、Web上に存在している情報を検索するプログラムですが、この検索プログラムを提供している Webサイトを検索サイトと呼ぶことがあり、この検索サイトを検索エンジンと誤解していることがあります。
良質な情報を素早く得ることができれば、自らの考えを形成するための近道になりますが、これまで誰も経験したことのない情報化社会の中では、情報を取得したのち、情報を濾過する人間というフィルターがどのような判断をするのか、常に人間の力が試されている気がします。