ソフトウェアを知る
現在、私たちがパソコンやスマートフォンなどの情報機器 ( 以下 機器 ) を手にする時、機器が動作をするための機能を提供するオペレーションシステム ( 以下 OS ) と、情報を閲覧する Webブラウザなど、便利なアプリケーションソフトウェアが最初から機器に搭載 ( プリインストール ) されているため、それをソフトウェアとして意識して使うことが少なくなりました。
ソフトウェアとは、コンピューターシステムを構成する要素のうち、コンピューターに対して計算や処理の手順を命令する複数のプログラムと、そのプログラムで処理される電子情報のデーターや文書を併せ持つもので、目に見える形では存在していないものです。
なお、OSは機器を動かす基本のシステムソフトウェアに分類され、機器を入手後、一般的な用途でOSを変える機会はほとんどありません。一方、特定の目的に応じて機能を提供するソフトウェアはアプリケーションソフトウェアに分類されます。
アプリケーションソフトウェアは、目的に合わせていろいろな種類のものを、後から機器にインストールして使うことができ、2007年 ( 平成19年 ) 頃から普及したスマートフォンのアプリケーションソフトウェアを含めると、その数は数えきれないほど膨大で多種多様にあり、その開発者も多数存在します。
例えば、長く利用されているアプリケーションソフトウェアで有名なものに、Microsoft のワープロソフト Word 、表計算ソフト Excel などがありますが、他にも、事務的作業を効率化するソフト ( 会計⋅給与計算⋅勤怠管理など ) 、メールソフト、作図などに使用するCADソフト、画像や動画の編集ソフト、セキュリティ対策ソフト、バックアップソフト、サイト作成ソフトなど、その種類と用途は多岐に渡ります。
なお、パソコン用は「 ソフト 」、スマートフォン用は「 アプリ 」と表現されることがありますが、どちらもアプリケーションソフトウェアに分類されます。
現在、身近にあるソフトウェアについて理解を深めるために、その種類と特徴をまとめることにします。
ソフトウェアの種類と特徴
ソフトウェアには「フリーウェア」と呼ばれる無償のソフトウェアと「シェアウェア」と呼ばれる有償、もしくは試用期間後や機能追加時に課金が必要なソフトウェアの他に「フリーソフトウェア」というものがあります。
機器に最初から搭載されているアプリケーションソフトウェアは無償のため「フリーウェア」、目的に合わせて後から機器にインストールするものには「フリーウェア」と「シェアウェア」が混在します。
「フリーソフトウェア」は「オープンソースソフトウェア」とも呼ばれ、コンピュータープログラムを表現する文字列であるソースコードが公開されているものですが、これを扱うにはコンピューター言語の理解が必要です。
なお「フリーソフトウェア」のフリーは無償という意味ではなく、自由に使用して再配布も可能なソフトウェアという意味を持ちますが、英語の free を日本語に訳すと「無償」と「自由」という両方の意味があるため、日本では無償の「フリーウェア」と同じもの、と誤解されて伝わることがあるようです。
これらのソフトウェアの特徴について整理したいと思います。
フリーウェア
「フリーウェア」は、無償で使用できるソフトウェアですが、その利用条件はさまざまで、ソフトウェアの開発者が著作権を放棄していない場合はソースコードは公開されず、試験的に配布してよく使われるようになったら有償の「シェアウェア」に変わるものや、中には突然更新されなくなったり、配布停止になったりするものもあります。
パソコンが1社1台の時代から1人1台の時代へ、今ではスマートフォンやタブレットも含めると1人で複数の機器を使用することが珍しい時代ではなく、かつては通信した分の通信料が発生する従量制のダイアルアップ接続 ( 有線 ) だったインターネットは、定額の高速通信による常時接続 ( ブロードバンド ) や電波を用いた無線通信が一般的になりました。
通信回線や電波を使ってインターネットに常時接続できるようになったことで、最初から機器に搭載されている Web ブラウザなどの「フリーウェア」を使って、特定の機能を持つ無償の「フリーウェア」を 、いつでもWebサーバーなどから機器へダウンロードして使うことができます。
早い速度で進化しているネットワーク社会では、増え続ける膨大な数の「フリーウェア」の安全性を確認するのはきわめて困難なため、完全なセキュリティ対策はありませんが、常に危険性を意識し、使う前にその取り扱いについて考えることがセキュリティ対策につながります。
便利な「フリーウェア」を無償でいつでも試しやすくなっているからこそ、LANなどのネットワークに接続して使う機器については、安全だと判断できるもの以外はダウンロードしない、させない、などの決まりを作ることも有効です。
シェアウェア
「シェアウェア」は 1980年代 ( 昭和55年代 ) に、アメリカの開発者が制作したソフトウェアを使い続ける使用者に開発費の寄付を求めたことから生まれたもので、のちに気に入ったソフトウェアに料金を支払うものとして紹介されるようになったものです。
しばらくの間、有償買い切り型の「シェアウェア」は、プログラムが収録された CD-ROM が入ったパッケージ ( 箱 ) で販売されていたため、パッケージソフトウェアとも呼ばれていますが、目に見える形でその存在を確認することができ、また、基本的に機器1台に対しソフトウェアライセンス ( 使用許可 ) が1つだったことから、利用している機器とそのライセンス数は比較的容易に把握することができました。
現在、多くの「シェアウェア」はWebサイトの中で購入し、機器へ直接ダウンロードできるようになったため、以前のように目に見える形で、その存在を確認することが少なくなりました。
また、多くの人がすでに利用していた有償買い切り型の「シェアウェア」は、月や年間契約で使用料を支払うサブスプリクション方式になったり、新しい利用者に向けて試用期間や制限設けてから課金したりするなど、提供方法が変化しています。
今では1人で複数の機器を使用することが珍しい時代ではないため「シェアウェア」によっては、1つのライセンスを複数の機器にインストールすることが可能で、同時利用は不可、法人と個人で使用可能な機器の台数に違いがあるなど、利用条件にそれぞれ違いがあります。
サブスプリクション方式では、通信回線や電波を使ってインターネットへ接続することにより ( オンライン ) 、契約期間中は常に最新バージョンの「シェアウェア」に更新できるほか、その「シェアウェア」を使って作成したデーターなどを Web上に保管しておく場所 ( クラウドもしくはストレージ ) が付属している場合、特定の場所に留まることなくデーターを使ったり、複数の機器からデーターを編集したりすることができるようになります。
ただし、セキュリティ強化を目的として他の機器やインターネットに接続しない場合 ( スタンドアロン ) や、常に最新バージョンを使う必要がなく、構内情報通信網 ( 以下LAN ) の中だけでデーターを使用する場合などでは、あえて昔ながらの買い切り型を選択する方がよい時もあります。
なお、アプリケーションソフトウェアに分類される、「シェアウェア」は単体で存在していても動かないため、機器やOSの更新に伴って「シェアウェア」の更新も必要となり、また、年間契約の「シェアウェア」は、更新手続きが都度必要なもの、解約時期が固定されているもの、などがあるため、管理が必要な機器の台数が多くなるほど「シェアウェア」を一括管理できる方法の検討も必要になります。
これまでの間に開発元がプログラムの更新をしなくなったために使えなくなった「シェアウェア」、サポートが終了したWindows7などのOSを搭載した機器でしか使えない「シェアウェア」があります。
ある程度操作方法を覚える必要がある「シェアウェア」は、特別な事情がない限り後継のものを使い続ける可能性が高くなるため「シェアウェア」を選ぶ時は、サポート体制の他、これまで作成してきたデーターや文書との互換性などにも着目し、選定を進めることがポイントになります。
フリーソフトウェア
「フリーソフトウェア」 (「オープンソースソフトウェア」ともいう) は、互いに協力して開発を進めるという精神から生まれたもので、一般にあまり馴染みはありませんが、開発技術を実体化しているソースコードが公開されることで、誰でも改良を加えることができるため、大規模な基幹系システムから Webブラウザ、サーバーやネットワークハードディスク ( NAS ) など、さまざまな場面で利用されています。
また、企業などが「フリーソフトウェア」を導入すると、ソースコードから脆弱性や不具合を確認して速やかに修正を行うことができたり、ソフトウェアの販売者によるサポートの打ち切りがなかったりする利点がある、と言われていますが、それはコンピューター言語を扱えることが前提になります。
アプリケーションソフトウェアを整理する
ソフトウェアは本来、物として存在しないため、ソフトウェアを確認するには、機器の中を見たり、機器の使用者に聞き取りをしたりすることが必要になり、LANなどのネットワークに接続する機器の台数が多くなるほど、ソフトウェアの管理は複雑になります。
機器を動かすシステムソフトウェアを変えることはほとんどないため、LANなどのネットワーク内で使用しているアプリケーションソフトウェアをリスト化して目に見える形にすることがソフトウェア整理の第一歩になります。
使用する機器の性能は使いたいソフトウェアに合わせて選定することがあるため、不要なソフトウェアがあることで機器に負荷がかかり機器の動きが遅くなることがあるほか、機器の購入価格にも影響します。
アプリケーションソフトウェアを目に見える形でリスト化するためには、事前に確認する項目を整理しておくとまとめやすくなります。
整理する主な項目の一例を下記にまとめますが、すべて確認する必要はなく、情報を集めるうちに現状を少しずつ把握できるようになります。
私たち人間にとって、ソフトウェアは道具です。
良い道具は、人間が何かを作ったり、行ったりすることの手助けをしてくれますが、作りたいものや行いたいことがはっきりしていないと、どんなに良い道具を持っていても使いこなすことはできません。
今、持っている道具を使いこなすことができているか、そして、それを使って何をしたいのか、新しい道具に助けを求める前に、今持っているものを見つめ直すことで何か気づくことがあるかもしれません。
道具は人間が何かを行いたいために作られるものです。どんな想いを込めて作られたものか、それを知ろうとすることも、私たちが考えを整理するための手助けになるはずです。